#12 グリーンブック(吹替)
人種も、職業も、思想も超えた友情がそこにあります。
1960年頃のアメリカを、2018年の近年になって描いた、割と最近の作品となっています。
タイトルの由来となった『グリーンブック』とは、過去に発行されていた黒人旅行者向けガイドブックです。
何故、そんなものが発行されていたのか。それは、『黒人の一般公共施設の利用を禁止、制限した法律』がアメリカにおいて施行されていたことが背景にあります。
レストランやホテル、果ては病院に至るまで、黒人は使用できる施設を制限されている時代、この『グリーンブックは』そんな黒人の助けとなるよう、いつかこのガイドブックが廃止される世の中が来るように願われながらも発行された書物となります。
しかし、そんな歴史的背景を知らずとも、この映画は十分に感動できる。
想像してみてください。価値観が違う人間と仲良くなることがどれほど難しいかを。
これは、作中のあるシーンを多少日本風に改変した例になります。
貴方は友人に成ろうと話しかけ、食事としておにぎりを渡します。けれど貴方が差し出したおにぎりを、手が汚れるからと食べることを拒否されてしまいました。
そういう人物が身近に居ると想像してみてください。
前提として、その人に悪意は無いのです。それがその人の常識であり、その人からしたら、おにぎりを差し出した貴方の方が常識外れなのです。
嫌悪感を感じますか?それともそういう人も居ると理解をしますか?
日本では滅多に起こり得ないケースですよね。そこまで常識が違う人が隣人である可能性が、島国の日本では少ないです。
けれどアメリカでは違う。肌の色、文化、食生活、他人の常識は自分とは違うのです。
日本で、そんな価値観が異なる人と友人になろうと努力する人がどれほどいるでしょうか。
多様性の時代です、そんな価値観が合わない人と友達にならないと断ずることも自由でしょう。私たちは友達や人間関係を選ぶことが出来る。確かにそれは自由な考えです。
ですが敢えて考えて欲しい。何故、友達にならないという選択をしてしまうのか。
この映画は人種や歴史的背景の問題も多分に含みますが、相互理解という最も基本的なコミュニケーションを描いています。
作中のキャラは良く喧嘩をします。片や雇用主で、片や労働者です。そんなパワーバランスであり、雇用主は黒人で労働者は白人です。
しかし雇用主である黒人は、『グリーンブック』に沿ったホテルでしか、宿泊することを法律が許していないのです。
そんな歪な関係で、2人は旅を重ねます。
互いのことが理解できない、貴方のお前のその行動や考え不快だと、2人は衝突しながら理解を深めていく。
理解を深める、簡単な一文で済ませてしまえるのが悔しいくらいです。
そもそも理解し合えないと、諦めることだって選択の1つであるのに、それをしないのですから。
簡単に理解をが出来るような、諦めて最初から境遇が近い人間とだけ付き合っていれば苦労が無いにも関わらず、敢えて理解が難しい他人へとエネルギーを割くことは本当に難しい。
フィクションだろうと都合主義であろうと、そんな2人のキャラクターのパワーと誠実さが眩しく見える作品でした。
不器用ながらも友情を紡いでいく名シーンです。
観終わってみれば、それほど難しい映画ではありません。
訴えかけるテーマは誰でも自分と向き合ってしまうほど明確で、名優の演技がストーリーに力強さとリアリティを与えています。
流石は幾つもの賞を受賞した傑作映画と言えます。様々な年代、性別問わずお勧めできる映画です。
人間ドラマであり、キャラクターの息吹を感じることが出来るので、視聴するなら吹替がお勧めです。字幕だと、どうしても没入感が損なわれますからね。
身近に居るけど理解できない人、そんな誰しもが抱える人間に対して、少しだけ自分から歩み寄ってみようと思えた作品でした。
まあ、相手がこの映画を知らないので、一方的な理解にしかならないかもしれないですけど...笑
結局は相互理解ですから。
願わくは、お互いが相手のことを理解することを諦めないことを信じて。
蛇足
日本の苛め問題とも似ていますよね。苛めている側は何が悪いのか理解しようとしませんからね。酷い場合には、それが苛めとも思ってない。
こいつは自分達とは違う、そんな考えは捨ててどうしたら友人になれるか、それだけを考えていれば幸せになれるんですかね。
まあ、いろんな人がいますからね。私もいい大人ですから諦め半分です。
思考を皆に強制するためには、それこそ洗脳でもするしかない。
そんなディストピア映画も好きなので、お勧めコメントお待ちしています。