#11 パプリカ(アニメ)
絵柄で食わず嫌いをしていたのを反省しました。
大人になった今なら、その絵柄すらも名作のスパイスです。
皆さんは夢を見る子供でしたか?
これは将来への憧れの話ではなく、夜間の娯楽としての話になります。
誰しもが退屈に感じ、各々の楽しみを見出していた学校への通学路。
今のようにスマホなんてなく、尚且つど田舎の田んぼ道を30分かけて歩いていた私の楽しみは、明け方に見た夢の続きを自分流に再生し続けることでした。
「深夜の夢が芸術的な短編映画だとしたら、明け方の夢は長編娯楽映画ってとこかな。」
作中の主人公パプリカのセリフになります。
夢見る子供であった私にとって、開始僅か5分で発せられるこのセリフは心臓を掴まれるものでした。
私にとっての夢は、正に長編娯楽映画そのもので、その時に見ていた明け方の夢がポケモンならば主人公サトシの友人に、ナルトであれば主人公ら第七班の4人目として一緒に中忍試験を受けたりしていました。
夢小説のようにアウトプットこそしなかったものの、似たようなものです。あの頃の私は、毎日訪れる明け方の劇場の開園を心待ちにしていました。
この映画は、そんな夢を他人と共有できる機械が開発されることから始まります。
他人の夢を映すだけのはずだった機械が悪用され、他人の夢を投射された人間は精神が狂ってしまうようになるのを主人公らが食い止める。
誰が機械を盗んだのか、他人の夢に入り込むことが出来る女性パプリカとは誰なのか。
SFなのは間違いないですが、犯人を追いかけていくストーリー展開は推理物のようで、ワクワクとした期待を持ったまま見進めることが出来ました。
この手のSF映画にありがちな、主人公らの感情が理解出来ず、ストーリーもおざなりでとにかく作画を意識したという、どこか惜しい映画とは一線を画す上手い作りになっています。
ただ肝心な作画についてですが、冒頭でも触れた通り、劇画とまではいかないですが、昨今の「君の名は。」や「サマーウォーズ」に代表されるアニメ映画とは違いとっつきにくい絵柄となっています。
また話も明快とは言えず、どちらかというと「AKIRA」や「攻殻機動隊」などのコアな映画が好きな方にはお勧めです。
ただ間違いなく名作と言える映画には違いなく、そのとっつきにくい絵柄すらも、夢の世界が崩れていくドロドロとしたダークな表現にマッチしていますし、明るい純粋な美しい夢との対比が際立つ技法の一つといえます。
なので絵柄が気になるのは本当に最初の数分のみで、あとは巧緻に描かれる世界に引き込まれていくことになります。
大人になった今、綺麗な部分しか描くことが出来なかった子供の頃の夢とは違い、現実が暗く陰を含む物であると理解した今ならばこそ楽しめる映画でした。
苦味を旨味として感じることが出来るようになったというべきですかね?
自分の変化に気づけたこの映画は、子供時代の夢にまで思いを馳せるほどに、心に衝撃を与えた名作だったでしょう。
蛇足
夢の豆知識として1つ。
レム睡眠:脳は活発に働いていますが、体は休んでいる状態。
ノンレム睡眠:脳が眠っている状態
一晩の割合としては、レム睡眠が25%、ノンレム睡眠が75%となっています。
割合としては夢を見るレム睡眠の方が少ないようでした。あの頃は毎日夢を見ていましたし、明晰夢マスターを自称していましたが、今では見ることの方が少なくなりましたね。
そんな睡眠について、少し調べた映画でもありました。