#15 クワイエット・プレイス(字幕)
部屋の軋み。
物音すらが貴方を襲う。
夏の終わり、夜は肌寒く感じる秋の始まり。
鈴虫の羽音が4,500Hzの交信曲を奏でようと、真冬に雪がしんしんと積る静寂に沈もうと、春の穏やかな陽気に包まれようと、1年中ホラー映画は楽しめます。
※ホラーなのか?ひょっとしたらSFにもなるかも。
[機器の不調を疑う世界]
見始めて数分、余りにも静か過ぎたこの映画に、音量チェックをしない人はいるのでしょうか。全くの無音で進行する世界に、理解をすると共に恐怖が沸き立ちます。
敵への対処法は音を出さないこと。
あまりにも明快でありながら、余りにも不可能な実現難易度。
話し声だけでなく、あらゆる物音に至るまで、主人公たちは無音の世界で生きています。足音を消すために裸足で歩く彼らの徹底ぶりは、現実世界に生きる自分の環境音を振り返ってしまうほど静寂に包まれたもの。
ホラー映画では演出上、静寂が訪れる場面が幾度かあると思います。その度、普段は気にならない部屋の軋みや、冷蔵庫の稼働音、外を走る車輛音など、様々なノイズに耳を傾けてしまうと思います。
そんな音すら許されない世界、音を出せない緊張感が、唯一無二の世界を作り上げています。
[総評]
自分の立場・環境だったらどうするか、そんな思案に暮れるのが楽しい映画でした。
何度かいうように、非常に会話も動きも少ない映画であり、言い換えれば『退屈』とも受け取られかねない映画です。
しかし余白があることが想像を描きたて、主人公たちが実践している消音方法に成る程と頷きながらも、また自分の世界を吟味する。そんな楽しさを味わわせて貰いました。
そして、誰しも思うのが、こんな世界で生きていたいか、という問いになります。
音が出せない限定化された、極限に制限された世界でどうに生きているのか。主人公たちは家族ですので、人間関係はどうしても題材の主軸となります。
というより、家族でも居ないとやってられない世界だなと。
ウォーキングデットのような世界で1人で生きているのと訳が違う。なんで自分はこんな我慢して生きているだと、常に疑問が付きまとう。
それほど音が出せないのは過酷だな、と新鮮な切り口を見せてくれた映画でした。
[以下 駄文]
最近はホラー映画がマイブームとなっています。
懐かしの死霊館シリーズから、和製映画の着信アリやリングなど、思い出をなぞるように視聴中。
そんな中、私のイメージでいえば『ホラー映画=霊』なわけですが、死霊館シリーズは宗教の関係もあり、敵が明確に悪魔となっています。外国からしたら悪魔も悪霊も同じなのかもしれませんが、ゲーム脳のせいで別枠処理。
貞子などの霊として残るキャラも生前は超能力者だったりと、共通点があるのでホラーも面白いなと思う、残暑の夜長。