#4 インビクタス 負けざる者たち(吹替)
見終えたばかりだと語彙が消失してしまい、陳腐な言葉でしか感想を書けないのが残念です。
それくらい、この映画には価値がある。
力強い映画です。
全体を通して、成し遂げる、という意志が伝わってくる、とても力強い映画です。
モーガン・フリーマン演じる、故ネルソン・マンデラ元大統領が成し遂げようと描き始めた国民融和政策。ラグビーというスポーツを通じて、白人も黒人も1つの南アフリカという国に生きているのだと、大統領は民衆へと訴えかけます。
迫害してきた白人達を許そうと説くマンデラ大統領の真意は、同じ黒人達でさえ容易に受け入れられるものではありません。家族を殺され、住処を奪われ、そんな国で黒人の大統領がリーダーとなる。
それだけで自伝映画が作れそうですが、この映画の良い所はそんな一方的な視点には無い。
マッド・デイモン演じる南アフリカの主将フランソワ、彼もまた主人公だからこそ良い。ラグビーチームとして不甲斐ない結果を残す自分たち、チームの意識を変えたいと思っていた彼の元へ、一国の大統領が言葉を掛ける。そこでフランソワは、大統領の真意を知り、彼の過去に思いを馳せる。
彼はチームをまとめ、黒人地域へと赴いた。黒人の生活環境に触れ戸惑う白人や、そんな白人を気にせず無邪気に遊ぶ黒人の子供たち。そんな民衆との触れ合いを通じて、彼そしてチームまた、国のために優勝を成し遂げようと力強さを取り戻していく。
27年間も投獄されていた上で、白人も黒人も関係の無い虹色の国を作りたい、大統領のそんな思いをフランソワがどうに受け止めたのかは、余人には預かり知らぬところでしょう。
けれど、彼もまた、リーダーであったのだと思います。率先してチームの手本となり、誰よりも練習をこなし、ランニングでは先頭を走り続ける。そこにはチームを変えたいと思う、成し遂げようとする強さがあった。
そんな、登場人物たちの力強さをこの映画からは感じ取れる。
↓トップ画もそうだが、2人並ぶシーンは見終わったあと、それだけでクルものがある
そしてこの映画の最も素晴らしい所は、この映画がスポーツの映画だということです。
どれほど荒々しくぶつかりあおうと、試合後には握手をするのがラグビーというスポーツです。
ただのプロパガンダではない映画ではなく、根本を成すものがスポーツだから良いのです。魅了する観客には国も、人種も無い。ルールの上に公正に行われるべきなのがスポーツです。
現実として、100%公正か、スポーツが清廉潔白などという問題は、試合を観ている最中の我々にはなんの関係も無い、思案の外にあることです。
つい最近行われていたワールドカップの日本戦の視聴率は40%を超えていました。ただ観るだけでも試合というのは面白いものですが、そこに至る選手の苦悩、挫折、成長を知れればよりスポーツ観戦は楽しくなる。
そういった意味で、この映画にはスポーツ映画としての側面もあると思うのです。
特に、最終戦でのスクラム時でのスローモーションなど、何となくスラムダンクの山王戦を彷彿とさせる、期待に揺れる心で画面に食い入ってしまいました。
白人と黒人の人種問題、南アフリカという国における問題点、そしてスポーツの熱い戦い、それら全てが融和したのが、この映画となっています。
主題である通り、「インビクタス-負けない者たち。」
言葉の通り、負けない、その力強さを感じることが出来ると思うのです。
とても良い映画でした。
蛇足
マンデラ大統領が投獄中に読んだという詩の中に、ちょっと意訳ですが、「私は、わたし自身の運命の支配者なのだ」という言葉が出てきます。
同じような言葉、バナナマンの設楽さんも「自分の人生は、自分が主役じゃなきゃ駄目だから」と口にしていました。
流石はカイザー。なんて、1人で思って映画観てました。